ピアノ引き取りの費用と「無料引き取り」のカラクリ
- ピアノの引き取りの行き着く先は3つだけ。お金を受け取って手放す(買取)か、0円で引き取られるか、こちらが費用を払うか。分かれ目は「電子ピアノかアコースティックピアノか」と「値が付くか」の2つ
- 買取が成立すれば、通常の搬出・運搬は査定額に含まれ支払いなし。2階以上やクレーンが必要な「特殊搬出」だけ約1万〜5万円かかる
- 「無料引き取り」は、引き取ったピアノを再生して売る業者の仕入れなので怪しい話ではない。ただし行き先を説明できない「無料回収」の業者にだけは渡さない
- 順序は、まず無料査定で「値が付くか」を確かめる→付かなければ無料引き取りの条件を確認→最後に有料引き取り
引っ越しや実家の片付けで、弾かなくなったピアノを引き取ってほしい。でも調べてみると、「無料で引き取ります」という広告と「処分に数万円」という記事が同時に出てきて、自分はお金を払う側なのか、もらえる側なのかも分からない、という方も多いと思います。この記事では、買取・引き取り業者7社の公式サイトを実際に調べて、上の結論の中身をひとつずつ確かめていきます。
ピアットは、特定の買取業者ではなく、各社が公式に公開している情報とGoogleに投稿された口コミをもとに、中立の立場でピアノ買取業者を比較・紹介するポータルサイトです。相場やサービス内容は、各業者の公式情報をご確認ください。
ピアノ引き取りの3つの出口|どれになるかは2つの質問で決まる
ピアノの引き取りには「買取(お金を受け取る)」「無料引き取り(0円)」「有料の引き取り(払う)」の3つの出口があります。どこに向かうかを分けるのは、電子かアコースティックかと、値が付くかどうかの2つです。
1つ目の質問は、電子ピアノか、アコースティックピアノか。この2つは、引き取りの受け皿がそもそも別です。今回、買取・引き取り業者7社の公式サイトを1社ずつ確認しましたが、ヤマハピアノサービスと三木楽器は電子ピアノを扱わない一方、エプコは電子ピアノ専門で、アコースティックには対応していません。同じ「ピアノ引き取り」でも、電話をかけるべき相手が最初から違うわけです。
2つ目の質問は、値が付くか。ここが、受け取る側と払う側の分かれ目です。ただし、これは自分では判断がつきません。実際、この記事のために知恵袋の質問を36件集めて読んだところ、いちばん多かったのは「何十年も前のピアノに値が付くのか」という不安で、36件中12件を占めていました。無理もありません。値が付くかは、査定の実額でしか分からないからです。
なので、先に無料の査定で「値が付くか」を確かめて、付かなければ無料引き取り、それも外れたら有料、という順番で試していくのが合理的です。幸い、査定はどの社も無料でした。
売らずに「引き取りだけ」を頼むこともできます
「売れないだろうから、買取業者に電話するのは気が引ける」という方がいるかもしれません。ここは心配いりません。買取業者の側が、値が付かない場合の受け皿を用意しています。
たとえば伸和ピアノは、買取対象外のピアノについて有料での引き取りに応じることを公式サイトに明記しています。ピアノの買取屋さん(UNISOUND)も、買取できない品物は処分代が必要になる場合があると書いています。つまり「査定に出す→値が付けば売る、付かなければそのまま引き取りを相談する」という一往復で、出口までたどり着けます。査定と引き取りの窓口を分けて探す必要はありません。
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引き取り費用の実額|「運搬費込み」の意味と特殊搬出の追加額
買取が成立する場合、通常の搬出・運搬の費用は査定額に含まれ、支払いは発生しないのが標準です。費用が動くのは2階以上やクレーンが必要な「特殊搬出」で、実額を公表している業者では約1万円から5万円以上かかります。
まず「無料」の中身から確認します。ヤマハピアノサービスは「ピアノ買取査定額には、一般的な運搬費用が含まれています」と総額表記を明言し、タケモトピアノも「査定や通常の運送費用をお客様に別途ご負担いただくことはありません」と書いています。請求書が来ないという意味では、たしかに無料です。
ただし、言い換えると運び出しのコストは査定額の中ですでに引かれているということでもあります。ピアノワンは、特殊搬出があると通常より5,000〜30,000円ほど搬出に費用がかかるため、その分査定額が下がるケースがあると公式に説明しています。「無料なのに、思ったより査定が安い」と感じたら、その差額はたいてい搬出条件です。
では、特殊搬出とは具体的に何で、いくらなのか。公式サイトで実額まで公表していたのは、7社のうちピアノワン1社だけでした。その公表値がこちらです。
| 特殊搬出の内容 | 追加費用の目安(公表値) |
|---|---|
| クレーン作業(2階の窓から吊るなど) | 約10,000円 |
| 大型クレーンが必要な場合 | 50,000円〜 |
| 人力での手吊り作業 | 50,000円以上 |
| 解体して搬出 | 30,000円〜 |
何が「特殊」に当たるかの線引きは、伸和ピアノが分かりやすく、①クレーン専用車を使う②分解する③階段が10段以上④櫓(やぐら)を組む——の4つを挙げています。「階段10段以上」は、戸建ての2階に置いたピアノならまず該当するラインだと思います。
なので、見積もりの電話をする前に、ピアノが何階にあるか・エレベーターに載るか・階段の幅で曲がれるかの3つだけ答えられるようにしておいてください。これが言えれば概算はその場で出ますし、当日になって「追加で」と言われる余地も減ります。
機種ごとにいくらで売れるかという相場の話は、別記事「ピアノ買取相場の目安」で公表データを並べています。値が付かなかった場合の処分費の実額は「ピアノの処分費用はいくら?」で試算していますので、そちらをどうぞ。
「無料引き取り」のカラクリ|タダでも業者が儲かる仕組み
無料引き取りが成立するのは、引き取ったピアノを再生して売るという出口が業者側にあるからです。再生済みの中古アップライトピアノは、実際に約30万〜55万円で販売されています。
数字を見てみます。中古ピアノ販売大手のグランドギャラリーの販売ページを確認したところ、掲載されていた中古アップライト20台の価格は約30万〜55万円(2026年8月時点)。いちばん多い値付けは44万円で、20台中8台を占めていました。同社は年間1万台以上を買い取り・販売し、常時4,000台の在庫を持つと公表しています。仕入れが0円のピアノでも、運搬と再生の費用をかけて30万円で売れるなら、商売として十分成立します。
出口は国内だけではありません。タケモトピアノは「海外50カ国への販売網」を公式サイトに掲げています。日本の家庭で弾き手がいなくなったピアノにも、海外にはまだ買い手がいる。テレビCMでおなじみの会社が無料引き取りを続けられるのは、この販路があるからです。
だから「無料になる人」と「有料になる人」に分かれます
この仕組みが分かると、同じピアノでも会社によって返事が違う理由が見えてきます。再生して売れる見込みがあるピアノなら0円でも引き取れますが、売れる見込みがないピアノ——損傷が大きい、再販市場で需要のないメーカー、といったピアノは、業者にとって仕入れではなくコストです。だから有料になります。
境界線を決めているのは、あなたのピアノの状態と、その会社が持っている販路の組み合わせです。ある会社で「有料です」と言われたピアノに、別の会社で値が付くことは普通に起こります。1社の返事だけで「うちのピアノは売れない」と決めつけないでください。
「無料引き取り」をうたう相手は3タイプ|見分け方はシンプルです
無料引き取りをうたう事業者は、①再販目的の買取業者、②電子ピアノ専門の引き取り業者、③廃棄物としての回収業者、の3タイプに分かれます。注意が必要なのは3つ目だけです。
タイプ①は、ここまで見てきた買取業者です。ピアノを再流通させる品物として受け取るので、無料が成立します。
タイプ②は電子ピアノ専門の引き取り業者で、代表格のエプコは出張料0円・処分料0円、壊れていて音が出なくても無料で引き取ると公式サイトに明記しています(北海道・青森・沖縄は対象外、一部メーカー・モデルは不可)。アコースティックと違って電子ピアノは再販単価が低いため、こうした専門業者は貴重な受け皿です。
タイプ③が、街を巡回したりネット広告を出したりしている「無料回収」の業者です。ここだけは法律が関わってきます。家庭のごみを回収できるのは、市区町村の一般廃棄物処理業の許可を受けた事業者だけで、産業廃棄物の許可や古物商の許可では家庭ごみは回収できない、と環境省が明確に注意喚起しています。国民生活センターも不用品回収サービスの相談増加を公表しており(2021年度は2,231件)、広告の金額と実際の請求が大きく違った事例を典型として挙げています。
見分け方は1つで足ります。「引き取ったピアノをどうするんですか?」と聞くことです。再生して売る・海外に送ると答えられる相手は、買取業者か専門業者として動いています。行き先を説明できないまま「とにかく無料で回収します」だけの相手には渡さないでください。無許可回収業者の具体的な見分け方と法的なリスクは、処分費用の記事で詳しく書いています。
引き取り業者7社の条件比較|公式サイトの記載をそのまま並べます
主要7社の公式サイトを実際に確認すると、通常の搬出費用はどこも無料か査定額込みで、横並びでした。差が出るのは「値が付かない場合」と「キャンセル料」の書き方です。依頼前に確認する価値があるのは、この2点だと思います。
2026年8月時点の各社公式サイトの記載を、そのまま表にします。「記載なし」は、公式サイト上に見つけられなかったという意味です(電話等で確認すれば答えてもらえる可能性はあります)。
| 業者 | 査定・通常搬出 | 特殊搬出 | 値が付かない場合 | キャンセル料 | 取扱い |
|---|---|---|---|---|---|
| ヤマハピアノサービス | 査定額に運搬費込み(総額表記) | 有料・下見あり(金額記載なし) | 記載なし | 記載なし | ヤマハ製アコースティックのみ |
| タケモトピアノ | 無料 | 別途費用の場合あり(金額記載なし) | 記載なし | 記載なし | アップライト・グランド・電子 |
| 伸和ピアノ | 無料 | クレーン・分解・階段10段以上・櫓は別途 | 有料引き取りあり(明記) | 無料(明記) | アコースティック |
| ピアノワン | 無料 | 実額公表(約1万〜5万円以上) | 記載なし | 無料(当日減額時も明記) | アコースティック・電子・故障品 |
| ピアノの買取屋さん | 無料 | 記載なし | 処分代が必要な場合あり(明記) | 基本無料(直前は例外) | 鍵盤楽器全般(エレクトーン可) |
| 三木楽器買取センター | 無料 | 階段・EV未申告だと追加の場合 | 記載なし | 完全無料(明記) | アコースティックのみ |
| エプコ | 出張料0円 | 記載なし | 無料引き取りが基本(電子のみ) | 記載なし | 電子ピアノのみ |
7社は3つのタイプに分かれます
見比べると、7社のタイプは3つです。タケモトピアノ・ピアノワン・ピアノの買取屋さんのように販路が広く全国対応の会社。ヤマハ製だけを買い取って自社で再生するメーカー公式(ヤマハピアノサービス)。そして電子ピアノ専門のエプコや、関西中心の老舗・三木楽器のような専門特化の会社です。ヤマハ製のアコースティックならメーカー公式という選択肢があり、電子ピアノなら専門業者という受け皿がある。自分のピアノがどのタイプに合うかで、電話する順番を決めるとムダがありません。
対応エリアには差があります。全国対応をうたう社でも北海道・沖縄・離島は割高になるか対象外のことが多く、伸和ピアノの直営対応は関東の7都県です。三木楽器は関東・東海・近畿・福岡に限られます。
電話ラッシュが不安な人は、一括査定を使わないでください
知恵袋の36件の中で、値段の次に目立った悩みがこれでした。「一括査定に出したら業者から電話が殺到すると聞いて、申し込めずにいる」という声が5件あります。心理的なハードルとしてはかなり大きいはずなのに、意外と知られていません。
対策は単純で、一括査定サイトを経由せず、この表から2〜3社を選んで1社ずつ頼むことです。複数社の見積もりを取ること自体は正しいので、比べるのはやめない。ただしまとめて依頼できるサービスに連絡先を渡すのではなく、自分で順番に問い合わせる。LINEやメールで査定できる社を選べば、電話自体をほぼゼロにできます。ちなみにピアノワンは「複数社からの電話ラッシュ一切無し」を自社の特徴として公式に掲げています。裏を返せば、それだけ電話ラッシュで困った人が多いということだと思います。
引き取り当日の流れと「その場で減額」への備え
引き取りのトラブルは、そのほとんどが「金額がいつ確定するのか」のすれ違いから起きます。確定するのは電話査定の時点か、当日ピアノを見た時点か。予約のときにこれを確認しておくだけで、大半は防げます。
知恵袋には、こんな実例がありました。2社に査定を頼んだら金額がばらばらで、しかも「正式な金額は契約後にしか確定しない」と言われて困惑している質問。引き取りの当日に、ピアノ内部の状態を指摘されてトラブルになった質問。どちらも、金額がいつ確定するのかを事前に確認していなかったことが火種です。
備えとしては、次の2つで十分です。
- 予約時に「当日、査定額が変わるのはどんな場合ですか」と聞いておく。まともな業者なら、傷や状態の申告漏れなど、変わる条件を具体的に答えられます
- 当日減額されて納得できなければ、断る。ピアノワンは「引取り日に査定額が減額された場合は無料でキャンセル可能」と公式に明記しています。この一文があるかどうかを、他社でも予約前に確認しておくと安心です
キャンセル料については、伸和ピアノと三木楽器が「無料」を明記しています。逆に記載のない社もあるので、比較表の「キャンセル料」の列は予約前に一度見ておいてください。
なお、出張買取には法律上の保護(クーリング・オフや、その場で引き渡しを断る権利)もあります。引っ越しに伴う売却では適用されない場合があるなど条件が細かいので、詳しくは別記事「ピアノ買取で損しない準備」で解説しています。
よくある質問
50年前のピアノでも引き取ってもらえますか?
引き取り自体は、ほとんどの場合可能です。問題は値が付くかどうかですが、これも諦めるのは早いです。1974年製・経年劣化のあるヤマハU1Hに5,000円の値が付いた公開実績があります(2026年8月確認)。まず査定に出して、値が付かなければ有料引き取りを明記している業者(伸和ピアノなど)に相談してみてください。
買取ではなく「引き取りだけ」を頼めますか?
頼めます。伸和ピアノは買取対象外のピアノの有料引き取りを、ピアノの買取屋さんは買取できない品の処分対応(処分代が必要な場合あり)を、それぞれ公式サイトに明記しています。査定の連絡をするときに「値が付かなかった場合の引き取り費用」を先に聞いておくと、一度の問い合わせで済みます。
タケモトピアノは、値が付かないピアノの有料引き取りもしてくれますか?
公式サイトには、値が付かない場合の扱いについての記載が見当たりませんでした(2026年8月確認)。査定自体は無料なので、査定を頼む際に「買取にならなかった場合はどうなるか」を直接確認するのが確実です。
メーカーに引き取ってもらえますか?
ヤマハ製なら、メーカー公式のヤマハピアノサービスが買取をしています。ただし対象はヤマハ製のアコースティックピアノのみで、電子ピアノ・エレクトーンは対象外です。他メーカーについては、公式の買取窓口があるかを各社サイトで確認してください。メーカー窓口がなくても、この記事の比較表にある買取業者はメーカーを問わず査定します。
電子ピアノの引き取りは、どこに頼めばいいですか?
アコースティックとは受け皿が別です。壊れていても無料で引き取る電子ピアノ専門業者(エプコなど)があり、自治体の粗大ごみに出せる場合も多いです。まだ動くなら売れる可能性もあるので、売り方と相場は別記事「電子ピアノを売るならどこがいい?」を見てください。
まとめ|「払う」は最後の出口で十分です
ピアノの引き取りは、3つの出口(受け取る・0円・払う)のどれかに必ず行き着きます。そして順序は決まっています。
- まず無料査定で値が付くかを確かめる(2〜3社に1社ずつ。一括査定は使わない)
- 付かなければ無料引き取りの条件に当てはまるかを確認する(電子ピアノなら専門業者へ)
- どちらも外れたら、有料引き取りを明記している業者に頼む(金額の確定タイミングを予約時に確認)
最後に、ピアノに限らず使える考え方を1つ。「無料」という言葉は、相手がそれで何をするのかとセットで初めて意味が決まります。引き取ったピアノを再生して売る業者の「無料」は仕入れであり、成立します。行き先を説明できない「無料回収」は、成立の理由がありません。大きなものを手放すときは、無料の理由を1つ聞く——これだけで、怪しい相手はほぼ除外できます。
まずは今日、ピアノのメーカー名と型番、置いてある階をメモするところから始めてみてください。メモが手元にあれば、査定の電話は数分で済みます。
業者各社の費用・条件は、2026年8月時点の各社公式サイトの記載を個別に確認して記載しています。条件は変更されることがあるため、依頼前に必ず各社の最新情報をご確認ください。廃棄物の回収許可に関する記述は環境省の公表資料、相談件数は国民生活センターの公表資料によります。個別のトラブルは消費者ホットライン188にご相談ください。
- ヤマハピアノサービス・タケモトピアノ・伸和ピアノ・ピアノワン・ピアノの買取屋さん(UNISOUND)・三木楽器ピアノ買取センター・エプコ 各社公式サイトの買取・引き取り案内(2026年8月実査)
- グランドギャラリー 中古アップライトピアノ販売ページ・会社案内(2026年8月実査)
- 環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」
- 国民生活センター「不用品回収サービスのトラブル」(2022年11月2日公表)
- Yahoo!知恵袋のピアノ引き取り関連質問36件(2026年8月収集・分類)
本記事は法令原文・公的機関の公表資料・各社の公開情報を確認したうえで、ピアット編集部が作成しています。運営者情報は運営会社ページをご覧ください。
最終更新:2026年8月17日